- PASの構造
- PASの役割
- PASのひもの結び方
この記事の目次
PAS(柱上気柱負荷開閉器)の役割
PASの取り付けられている場所
PAS(柱上気柱負荷開閉器)は次の写真のように高圧の電気を引き込む電柱に取り付けられています。
PASとは、Pole mounted Air Switchを略したものです。
PASの構造
PASの中は、開閉器のほかに、高電圧から地絡方向継電器の制御用電源を取るためのVT内蔵しているものや、雷からPASを守るために避雷器(LA)を内蔵しているものもあります。
図でイメージを表すと、次のようになります。

PASの役割
PASの役割は大きく分けて次の2つがあります。
- 地絡事故からの保護(GR動作)
- 短絡事故からの保護(SO動作)
地絡事故からの保護(GR動作)
地絡事故とは、電線の被覆が傷ついたり、経年劣化したりしてケーブルの絶縁が悪くなり、大地に大きな電流が流れてしまう現象です。
PASの役割の1つとして、地絡事故からの保護があります。
地絡電流は負荷電流であるため、PASの消弧能力でも遮断することが可能です。
このように地絡事故から保護する動作をGR動作といいます。
GRとは、Ground Relayの略で意味は地絡継電器です。
動作原理について、次の図を使って説明します。

- 負荷側で地絡事故が発生
- 零相変流器や零相電圧検出器で地絡事故を検出
- 地絡継電器へ送られた電流や電圧からSOG制御装置で地絡事故を判別
- 地絡事故が起こった場合、SOG制御装置からPASへ遮断信号を送る
- PASで遮断
短絡事故からの保護(SO動作)
短絡事故は、相間が何かしらの導体により直接つながれてしまい、大電流が流れる事故をいいます。
短絡電流でPASが動作することをSO動作といいます。SOは、Strage Over Currentの略で、意味は短絡電流です。
負荷遮断器以下での短絡事故の場合、キュービクルや配電盤に取り付けられている過電流遮断器や真空遮断器で遮断することが可能ですが、それより上流の場合は、遮断できません。
その場合、PASで電路から遮断しますが、PASの消弧能力では、短絡電流のような大電流は遮断することができません。
そこで、短絡事故については、また別な方法で遮断します。その方法を次の図を使って説明していきます。

- 負荷の高圧側で短絡事故が発生
- PASで大電流を検知
- PASが遮断しないようにいったんロックされる
- PASの上流側の遮断器で遮断
- PASが無電圧を検知し、遮断
このように、短絡事故時のPASの動作は、いったん無電圧になってから遮断というように、地絡事故時とは異なったものになります。
ちなみに、地絡事故・短絡事故から保護のために制御する装置のことをSOG制御装置といい、だいたい電柱の下の小さくボックスに入っています。
PASの紐の結び方
PASについて、構造や役割がわかったところで、次はPASの紐の結び方について解説していきます。
PASには、遮断操作を手動でする時のために、長い紐がついており、それを操作することでPASを入り切りすることができます。
紐は通常、電柱に締め付けており、風などでほどけにくい締め付け方になっています。
では、紐の締め付け方を次の図に沿って説明していきます。
図での説明をまとめると次のようになります。
- 足場ボルトの向こう側から手前へ2~3回巻き付ける。
- 巻き付けたあと輪を作り、時計方向に1回ねじり、その先端を足場ボルトに引掛ける。
- 引掛けたあと、ひもを強く下へ引き下げて締め付ける。
- 残ったひもを足場ボルトに巻き付ける。
以上が、PASの紐の結び方になります。
PASの紐は電気主任技術者であれば操作することもありますので、やり方はおさえておきましょう。
さいごに
この記事では、PASの役割や紐の結び方について説明してきました。高圧を扱っている人は、PASの動作について十分に理解しておく必要があります。
しかし、PASは普段触ることがあまりないので、意外とわからないことが多いと思います。
この記事を参考にPASの理解を深めてください。
参考文献
高圧・特別高圧電気取扱特別教育テキスト(オーム社)、一般社団法人日本電気協会