この記事の目次
変圧器の点検項目
変圧器の状態を見るためには、いくつもの計器がついています。
- 圧力
- 温度
- 絶縁油の高さ
- 停電時に確認する項目
変圧器の圧力
変圧器の圧力は内部事故によって主に上昇するので、圧力をみることで事故を未然に防ぐことができます。
圧力が上がる原因
圧力を上昇させる主な原因は、変圧器内部で短絡事故が発生して、油温度が上昇し、油が気化することがあげられます。
また、ガスを用いている場合も同様に温度上昇により気体体積が大きくなり圧力が大きくなります。
この際に圧力を逃がす装置がないと、爆発を起こし、重大事故に繋がります。
そのため、変圧器の圧力を外へ逃がす装置が必要です。
圧力を外へ逃がす装置
変圧器の圧力を外へ逃がす装置にはいくつか種類がありますが、主なものに自動復帰型放圧弁(避圧弁)があり、変圧器のタンクに装着し、圧力が上昇したら弁が開いて圧力を逃がします[1]。
圧力を外へ逃がすことで、付帯する設備を保護することができます。
安全弁が動作したことが目視でわかる動作表示板が付いてるものもあり、便利です。
動作圧力は50kPa〜80kPaで、変圧器の仕様に合わせて動作圧力を選定しましょう。
変圧器の温度
変圧器の上部には温度計がついているものが多いです。
変圧器の温度は通常40〜60℃程度ですので、それ以上温度が上がっている場合は、不良を疑いましょう。
変圧器の温度が上がるの主な原因は、内部で短絡電流が流れていることがあげられます。しかし、他の原因も考えられますので、決めつけず調査が必要です。
絶縁油の油面高さ
変圧器についている油面計を見て、油面の高さを調べます。
油面計が下がっている場合は油漏れの可能性もありますので、早急な対策が必要です。
停電時に点検する項目
普段は点検できないが、停電時に変圧器内部を開けて確認する項目もあります。全て確認するわけではありませんが、普段の点検だけではわからない細かい状態までわかるので、停電の機会に行います。
停電時に確認することとしては、次の項目があります。
- 絶縁油の絶縁抵抗値
- 絶縁油の酸化度合い
- ガス濃度
- 蓋のパッキンひび割れの有無
- タップの確認
絶縁油の絶縁抵抗値
絶縁油は年月を経るとともに抵抗値が低下してきます[2]。
抵抗値が下がり過ぎると最悪の場合、絶縁破壊を起こし、大事故に繋がりますので、絶縁耐力試験により、基準値を満たすか確認します。
絶縁破壊電圧は、 20kV以上あれば良好に使用できますが、それ以下であれば注意が必要です。
絶縁油の酸化度合い
絶縁油は長期間使っていると酸化してきますので、酸価度試験により酸化の進行度を調べます。
酸価が進展すると絶縁油と金属やコイル絶縁物が化合しスラッジが生成されます。スラッジがコイル絶縁物、鉄心、放熱面に付着すると冷却効果が低下し、温度上昇が著しくなり絶縁物の熱劣化が加速されます[2]。
ガスの濃度
変圧器内部には絶縁紙が使われており、これが劣化するとCOやCO2などのガスが発生します。このガス濃度ををフルフラール分析という方法で測定し、絶縁紙の劣化度合いを調べます[3]。
蓋のパッキンのひび割れの有無
絶縁油が入っていますので、蓋にはパッキンがついています。
そのパッキンがひび割れていないか停電時に確認します。
タップの確認
負荷を切り替える際に接続点を変えるために、タップがついていますが、そこの切り替えが上手くいかないと接触不良を起こしてしまいます。
タップが正常に機能することを確認が必要です。
最後に
高圧受電設備において、変圧器は故障すると電気を供給できなくなるため非常に重要な設備です。
最後に今回のまとめは以下の通りです。
- 圧力
- 温度
- 絶縁油の高さ
- 停電時に確認する項目
参考資料
[1]株式会社品川測定器製作所、自動復帰型放圧弁(避圧弁)(2023/9/1) [2]公益社団法人日本電気技術者協会、絶縁油の管理(2023/9/9) [3]Adsorption Phenomenon of Furfural in Insulation Paper、フル フラールの絶縁紙へ の吸着現象(変圧器寿命 診断の基礎検 討) 、難波貞雄 著