- 過電流継電器の役割
- 整定値の決め方
この記事の目次
過電流継電器の役割
変流器の二次電流は継電器に入力され検出用、電源用それぞれの内部の変流器に入力されます。
電源用の変流器では、最小タップ以上の電流が流れると回路及び出力リレーを駆動する電圧を発生します。
わかりやすく説明したのが次の図です。
過負荷事故時(限時動作)
過負荷になった際は、かかった電流に応じて過負荷電流が大きくなるほど遮断時間が早くなります。
では、具体的に見ていきましょう。
動作原理
検出電流はレベル検出回路に入力され、T相、R相いずれかの入力信号が基準レベル以上になると 2 乗回路に信号を送り始動表示灯を点灯させます。
2 乗回路では基準電圧と比較し、入力量に応じたパルスを発生させます。
発生したパルスはカウンタにより計数され動作時間が決定されていきます。
カウンタが設定された数を数えると、出力リレー及び事故相に応じた動作表示器を動作させます。
動作時間
過負荷電流の動作は、電流値が大きいほど早く遮断できるようになっており、これを反限時特性といいます。
過電流継電器についているタップ値で動作する時間を決めます。タップ値が大きいほど動作する時間も長いです。
電流の整定値は、最小で動作する電流値で下のグラフの横軸は、整定値に対して何倍あるかということを表しています。整定値に対して、2倍、3倍と大きくなるほど動作時間もそれに伴って短くなるのです。
電流が大きいほど早く遮断しないと大事故につながってしまうため、動作時間も短くする必要があり、このような特性になっています。
短絡事故時(瞬時動作)
短絡時は地絡事故に比べて大きな電流が流れるので、瞬間的に大きな電流が流れた際に時間をかけずに遮断できるようにしています。この短絡時に過電流継電器が動作すること瞬時動作といいます。
検出電流はレベル検出回路に入力され基準電圧と比較し、瞬時に出力リレーを動作させる信号を出すと同時に瞬時要素の事故相に応じた動作表示器を動作させます。
過電流継電器の設定値
過電流継電器の動作時間はどのように決められているのか説明していきます。
過電流継電方式
過電流継電器方式は過電流によって電路を遮断する方式です。
過電流継電方式では、過電流継電器の動作時間は、次の図のように電源の大元に近づくほど長くなるように値を整定します。
そのため、まずは大元の過電流継電器の動作時間を決定し、それより短くなるように末端側の動作時間を決めていきます。
このように動作時間に差をつけることを保護協調といい、事故が起きた際に末端から遮断し事故を最小限にします。

動作時間の決定
高圧設備で、過電流継電器の動作時間を決定する際は、電力会社配電系の末端にあることを考慮して考えます。
限時時間の動作時間は求めた電流の整定値の10倍を超える領域で200m秒程度の場合が多いです。
整定値の決定
過電流継電器の動作を決める要素として、限時要素と瞬時要素がありますので、それぞれに分けて説明していきます。
次の図のように、変圧器一次側に過電流継電器を付けている場合の整定値の決定方法を考えましょう。
限時要素は次のように求めます。実際に機器に値を入れる際は求めた値以上のキリのよい数字で設定します。
限時要素とは、ある時間その値の電流が流れた場合に遮断する電流値のことです。
次に同様に瞬時要素を求めます。
瞬時要素とは、瞬間的に短絡電流が流れた際に遮断する電流値のことです。
過電流継電器のトラブル
過電流継電器に関するトラブルには次のようなことが考えられます。
保護協調の設定ミス
上流側の過電流継電器の動作時間が、下流側よりも短く設定されていた場合に事故が発生した場合を考えます。
この場合、下流側の過電流継電器が動作する前に上流側の過電流継電器が作動していしまい、送電を止める必要が無い箇所まで停電になってしまします。このように事故範囲が広がることを波及事故といいます。
そのため、過電流継電器の動作時間を決める際は、上流側が下流側よりも長くなるように設定します。
さいごに
過電流継電器は、短絡事故や地絡事故を防ぐ大事な装置で、高圧設備には必ずついています。
この記事を参考に、過電流継電器について理解を深めておきましょう。