電動機用動力ブレーカーの選定方法

電動機用動力ブレーカーの選定方法

悩む人
電動機などに接続する動力用ブレーカーの容量を選定したいんだけど、どうやって決めたらいい?
筆者
電動機用動力ブレーカーは、特殊なブレーカー容量の決め方なので、詳しく解説していきます!
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動力用ブレーカーの設計指針

以下のように、電動機が数台と、その他の負荷としてヒーターをつないだ配線で、電動機に接続する動力用ブレーカーの選定方法を解説していきます。

どうして電動機用ブレーカーは特殊?

電動機用動力ブレーカーの設計が特殊な理由を説明します。

電動機、その中でも特に誘導電動機は、始動時に次のグラフのように定格電流の数倍の電流が流れます。

誘導電動機の電流の時間変化
誘導電動機の電流の時間変化

そのため、普通に定格電流からブレーカー容量を選定してしまうと、始動電流によってブレーカーが落ちてしまうため電動機に接続する動力ブレーカーは特殊な設計になります。

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電動機とブレーカーは1対1

電動機は、説明したように始動電流が多いという特徴があります。

このため、電動機には、1台につき1個のブレーカーをつけるように内線規程で定められています。

これをイラストで表すと、次のようになります。

根拠となる内線規程の箇所を次に記載しておきますので、興味があれば読んでみてください。

3705-2 分岐回路の施設
電動機は、1台ごとに専用の分岐回路を設けて施設すること。(一部抜粋)

3705-3 分岐開閉器および分岐過電流継電器の施設
1.電動機に電気を供給する分岐回路には、3605-4(分岐回路の開閉器および過電流遮断器の取付け)1項の規定に準じて開閉器及び過電流継電器を施設すること。(一部抜粋)

設計手順

ブレーカーや配線を決める際は、次のように末端から大元にいくように設計をしていくとよいです。

今回説明する設計は、②、③の箇所になります。

設計手順
  1. 各機器を決める
  2. 各機器へのブレーカーと電線の選定
  3. 動力の主幹ブレーカーを選定
  4. 動力の幹線を選定
  5. トランス容量が足りるか、どこから持ってくるかを決める(改修工事の場合)
設計手順を表す図
設計手順を表す図
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ブレーカーと電線の選定方法

それでは、ブレーカーと電線の選定方法を解説していきます。

選定方法は、主に次の3つがあります。

  • 電動機の取扱説明書から決める
  • 内線規程を使い計算する
  • 内線規程の表を使う
筆者
それでは、順番に説明していきます。

電動機の取扱説明書から決める

多くの場合、この決め方が、一番確実な方法と考えていいです。

なぜかというと、電動機の種類や結線方法によって始動電流がそもそも異なります。

ですので、内線規程から計算で決めることもできますが、始動電流の大小により、ブレーカー容量が過剰になったり、少なすぎたりする可能性もあります。

電動機の取扱説明書であれば、機器の仕様に合った決め方を書いてくれているので一番確実といえるでしょう。

では、実際に次に示すような電動機のブレーカーと電線を取扱説明書の表を使い決めてみます。

電動機の仕様
電動機の仕様
表で、前に示した電動機の条件に一致する箇所をみると、配線の最小太さは5.5mm2、配線用過電流遮断器の容量は75Aであることがわかります。
参考:三菱電機三相かご形モータ
参考:三菱電機三相かご形モータ

内線規程を使い計算する

続いて内線規程から計算する方法です。

ブレーカー容量の選定

まずは、ブレーカー容量を選定します。

ブレーカー容量の選定は次のように、電動機の定格電流の値によって、算出が異なります。

電動機の定格電流が50A以下の場合は、過電流遮断器の定格電流は、電動機の定格電流を3倍にした値以下です。

電動機の定格電流が50Aより大きいの場合は、過電流遮断器の定格電流は、電動機の定格電流を2.75倍にした値以下です。

ブレーカー容量の選定
ブレーカー容量の選定

先ほどの電動機の定格電流は30Aだったので、(a)に該当し、

IB ≤ 3×30A=90A

ブレーカーの容量は90A以下で、かつ始動電流により動作しないものを選定する必要があります。

根拠となる内線規程は以下の通りです。

内線規程:3705-3-3
過電流遮断器の定格電流は、当該電動機の定格電流の3倍(電動機の定格電流が50Aを超える場合は、2.75倍)にほかの電気使用機械器具の定格電流の合計を加えた値以下で、かつ、電動機の始動電流により動作しない定格のものであること。ただし、電動機の過負荷保護装置との保護協調が適切であるときは、当該分岐回路に使用する電線の許容電流の2.5倍以下とすることができる。(一部抜粋)

電線の選定

続いて、分岐回路からブレーカーへの電線の選定方法を解説します。

電線は、次のように選定します。

電動機用ブレーカーの電線の選定方法
電動機用ブレーカーの電線の選定方法

先ほどと同様の仕様の電動機で考えて、計算すると次のようになります。

まず、ブレーカー容量は90A以下と計算できましたので、容量を90Aにしたとします。

すると、①より電線の許容電流は、

IW ≥ 0.4×IB

IW ≥ 0.4×90A = 36A

②で計算すると、電動機の定格電流は30Aで50A以下なので、

IW ≥ 1.25×IM

IW ≥ 1.25×30A = 37.5A

となります。ここで、①と②を比べると②のほうが値が大きいことがわかります。

ですので、電線の許容電流は37.5A以上を選定します。

内線規程に載っている表で、電線サイズを調べると、該当するのは、CV3心だと5.5sqあたりであることがわかります。

電線の選定
600V架橋ポリエチレン絶縁ビニル外装ケーブルの許容電流値(単心、2心、3心)

根拠となる内線規程の箇所は以下の通りです。

内線規程:3705-4 電動機用分岐回路の電線の太さ(一部抜粋)
電動機に供給する分岐回路の電線は、過電流継電器の定格電流の1/2.5(40%)以上の許容電流のあるもので、かつ、次の各号いずれかに適合するものであること。
①連続運転する電動機に対する電線は、次のいずれかに示す太さのあるものを使用すること。
a. 単独運転する電動機などに電気を供給する部分は、次によること。
(a) 電動機などの定格電流が50A以下の場合は、その定格電流の1.25倍以下の許容電流のあるもの
(b) 電動機などの定格電流が50Aを超える場合は、その定格電流の1.1倍以上の許容電流のあるもの

内線規程の表を使い求める

続いて、内線規程を使ったブレーカーと電線の選定方法を紹介します。

内線規程の末尾にある資料を見ると次のような表が載っていますので、そちらを用いても選定することができます。

前に説明した仕様の電動機の場合で表を使って、ブレーカー容量を選定すると、じか入れ始動の場合だと75Aで、
電線の最小はCVケーブル配線で見ると3.5mm2と求まります。

内線規程の表による選定
200V三相誘導電動機1台の場合の分岐回路

ただし、内線規程での選定は、場合によっては少し過剰になることもあるので、念のために計算でも求められるとよいです。

さいごに

今回は、電動機用ブレーカーの容量選定と電線の選定について、解説しました。

今回解説したように、選定方法によって容量や電線太さも異なってくることもありますので、状況に応じていろいろな選定方法を知っておくとよいです。

電動機用ブレーカーと電線を選定する際は、この記事を参考に決めてみてください。

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