架空送電線の雷害防止対策

悩む人
架空送電線に雷があたったときはどんな弊害があるの?
また、その原因と対策を知りたい!
筆者

近年はインターネットの普及や、機械の自動化などで電気の需要はますます高まってきており、雷による事故は起こる社会に甚大な被害を及ぼします。
そんな雷による事故の種類および対策を今回は解説して行きます!

雷の発生原理

雷雲が発生し、どのように電荷が分布するのか説明していきます。

次のように雷雲は電荷を帯びていきます。

雷雲の電化が分布する様子
  1. 雷雲中で大気の水蒸気が断熱膨張を起こす。
  2. 粒の大きさの違いと上昇気流によって、雷雲上部には温度の高く(ー10℃)、粒の大きいひょうやあられができ、下部には温度が低く(ー20℃)、粒の小さい氷晶が形成される。
  3. この時温度の高い(ー10℃)ひょうやあられは負に、温度の低い(-20℃)氷晶は正に帯電する。
  4. 雷雲下部の負電荷によって大地表面に正電荷が蓄積される。
  5. 雷雲下部の負電荷と大地表面の正電荷によって強い磁界が生じる。
  6. 雷雲下部の大地間の磁界が絶縁破壊に至ると直撃雷となる。

図でイメージを表すと次のようになります。

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直撃雷と誘導雷

続いて直撃雷と誘導雷について説明します。

直撃雷

雷が送配電線その他の機器に直接落雷することをいいます。

誘導雷

誘導雷は直接送電線に雷が当たって影響が出るわけではなく、雷により間接的に強い磁界が発生し、通信電や電力線に影響を与えます。

誘導雷はその発生原理によってさらに、電磁誘導雷と静電誘導雷に分けられます。

誘導雷のイメージを図で表すと次のようになります。

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フラッシュオーバーと逆フラッシュオーバー

雷による事故はフラッシュオーバーと逆フラッシュオーバーがあります。それぞれ解説していきます。

フラッシュオーバー

フラッシュオーバーは電線に雷が直撃することにより起こる現象です。

雷が直撃し電線の電圧が上がり、アークホーンで絶縁破壊が発生し、瞬低を起こります。アークホーンはフラッシュオーバーが発生しても碍子に損害を与えないように付けられていますが、碍子でフラッシュオーバーが起こった場合は地絡事故につながることもあります。

フラッシュオーバーを図で表すと次のようになります。

逆フラッシュオーバー

逆フラッシュオーバーは鉄塔または架空地線に雷が落ちた際に、鉄塔または架空地線の電位が上昇し、架空送電線に逆流することをいいます。

図で表すと次のようになります。

雷事故の低減対策

架空送電線の電気事故の多くは雷によるもので、主に次の3つの対策があります。

図でまとめると次のようになり、それぞれ詳しく解説していきます。

架空地線の多条化

架空地線を多条化することで、送電線への直撃雷を防ぎます。

また、鉄塔や架空地線へ雷が落ちたときに電位上昇を抑えることができるため逆フラッシュオーバーを防ぐ効果もあります。

塔脚接地抵抗の低減

塔脚の接地抵抗を低くすることで、電撃電流を地面に流しやすくします。これにより鉄塔の電位上昇を防げるので逆フラッシュオーバーを防止することができます。

碍子装置の高絶縁化

碍子を高絶縁化することで、架空送電線に落雷があった際も碍子が絶縁破壊を起こさないためフラッシュオーバーを防ぐことができます。

さいごに

今回は架空送電線の雷害防止対策についてまとめました。架空送電線の事故の多くは雷によるものなので、雷事故の原理や対策を知っておくと電気主任技術者の業務にも役立つこともあると思います。さらに電験でもよく出題される内容なので、しっかりと理解しておきましょう。

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