今回は、単相3線式のブレーカーの容量と幹線の選定方法を解説していきます!
単相3線式はシンプルに見えますが、100V負荷の偏りや200V負荷の扱いなど、意外と奥が深いんですよ!
この記事の目次
1. まずは選定の全体フローを把握する
まずは、全体的な流れを確認しましょう。
基本的な選定手順は、次のとおりです。

STEP1 負荷電流を整理する
単相3線式の構成
単相3線式は、電圧線2本(L1・L2)と中性線1本(N)で構成されます。
-
L1-N間:100V
-
L2-N間:100V
-
L1-L2間:200V

負荷電流を整理する
まずは、どのような機器が接続されているかを整理しましょう。
今回は、次のような負荷が接続されているとします。

STEP2 負荷電流を計算する
負荷電流は、機器の電力と電圧から計算できます。
| 負荷 | 計算式 |
|---|---|
| 100V負荷 | \(I=P/100\) |
| 200V負荷 | \(I=P/200\) |
\(P\) は負荷電力(W)、\(I\) は電流(A)です。これは力率1として扱える負荷の基本式です。モーターなど力率を考慮する負荷では、必要に応じて力率や効率を考慮します。
100V負荷はL1側とL2側に分けて集計する
単相3線式では、100V負荷がL1側とL2側のどちらに接続されているかによって、各電圧線に流れる電流が変わります。
例えば、次先ほどの例で計算すると次のようになります。
| 負荷 | 接続先 | 電力 | 電流 |
|---|---|---|---|
| 複合機 | L1-N | 1500W | 15A |
| オーブンレンジ | L2-N | 1200W | 12A |
| スポットクーラー | L1-L2 | 2000W | 10A |
この場合、各電圧線に流れる電流は次のようになります。

-
L1側:15+10=25A
-
L2側:12+10=22A
200V負荷の電流は、L1とL2の両方に流れます。そのため、各電圧線の電流を計算するときには、200V負荷の電流を両側に加算します。
一方、中性線Nには、基本的に100V負荷の電流の差が流れます。
今回の例では、
\[
I_N = |15-12| = 3\,\mathrm{A}
\]
となります。
つまり、100V負荷の電流が左右で等しければ、中性線の電流は理論上ゼロになります。
STEP 3 ブレーカーの容量を決める
ブレーカーは、通常の使用電流で不要に動作せず、過負荷や短絡などから電路を保護できるように選定します。
基本的な考え方
-
L1-N間、L2-N間の大きいほうの電流を確認する。
-
同時に使用する負荷や需要率などを考慮し、設計電流を決める。
-
設計電流に適した定格電流のブレーカーを選ぶ。
この選定の流れを図で表すと、次のようになります。左の負荷電流から順番に決めていき、最後に幹線の太さを決めます。
左の項目ほど値が小さくなるように通常は設計します。ただし、需要率などを掛ける場合は、負荷電流より許容電流のほうが小さくなることもありますので、注意が必要です。

①負荷電流を決める
負荷電流を決めるために、まずは、L1-N間、L2-N間の大きいほうの電流を確認します。
先ほどの計算で言えば、L1-N間の25Aのほうが大きいのが分かります。
②設計電流を決める
今回の例で言えば、同時に使用する可能性があるので、計算した25Aが設計電流になります。
ただし、例えば家庭の台所を思い浮かべてもらうとわかりますが、食洗器やオーブン、ケトルを同時に使うことはほぼないですよね。
そのように、使用上同時に使うことがほぼないような場合は、単なる負荷の合計ではなくそのうちの何割使うのかという需要率を掛けて計算します。
例えば、負荷の合計が、40Aで需要率が0.8の場合は、許容電流は40A×0.8=32Aといった具合になります。
③ブレーカー容量を決める
ブレーカーの容量は内線規程の3605-3条に次のように記述があるため、これを参考に決める方法を紹介します。
連続負荷を有する分岐回路の負荷容量は、その分岐回路を保護する過電流遮断器の定格電流の80%を超えないこと。(勧告)
要は、何が言いたいのかというとブレーカー容量の8割以下に許容電流を抑えてね。ということです。
80%の逆数を取ると、1/0.8=1.25なので、つまり、許容電流の1.25倍以上にブレーカー容量はした方がよいということです。
式で表すと次のようになります。
\((ブレーカー容量)\geqq1.25\times(許容電流)\)
これより、求めた許容電流25Aでブレーカー容量を計算すると、
\[
\begin{aligned}
(ブレーカー容量)
&\geqq 1.25\times(許容電流)\\
&\geqq 1.25\times25\,\mathrm{A}
\fallingdotseq 31\,\mathrm{A}
\end{aligned}
\]
よって、ブレーカー容量は31Aよりも大きく一番近い規格を選定します。
すると、ブレーカー容量は40Aとなります。
STEP 4 電線の太さを決める
基本的に幹線の太さは、ブレーカー容量より大きい電流が流せるように選定します。
幹線をVVFで選定する場合は、内線規程の末尾資料にのっている1-3-3の表を使って選定できます。
ちなみに、単相3線式の場合、負荷がL1-NとL2-Nのバランスが取れていれば中性線には電流が流れません。
なので、表では2心の箇所を見て選定します。今回は、気中、暗きょに布設するとして、許容電流40A以上の箇所を見ます。
すると、8mm2以上のケーブルにする必要があることがわかります。

STEP 5 電圧降下を確認する
電線が細すぎたり、配線距離が長かったりすると、負荷側の電圧が低下します。許容電流を満たしていても、電圧降下が大きければ電線を太くする必要があります。
単相3線式の電圧降下は、回路の条件に合った計算式で確認します。
例えば、単相3線式の平衡負荷に対する簡易計算では、次の式を使います。
\(e\):電圧降下(V)
\(L\):配線のこう長(m)
\(I\):電流(A)
\(A\):電線の断面積(mm²)
この係数17.8は、単相3線式の平衡負荷を想定した簡易計算のものです。100V負荷の不平衡が大きい場合や、200V負荷の電圧降下を計算する場合は、回路条件に適した式を使ってください。
負荷の接続先で、電圧降下が許容範囲を超える場合は、電線の太さを見直します。
最後に:覚えておきたいポイント
- 負荷電流を整理する: 100V負荷はL1側とL2側に分け、200V負荷は両方の電圧線に流れる電流として計算する。
- ブレーカーを選定する: 設計電流だけでなく、負荷の特性や適用される規定、電線の保護条件を確認する。
- 電線を選定する: 許容電流と実際の布設条件を確認し、適切な太さを選ぶ。
- 電圧降下を確認する: 許容電流を満たしていても、電圧降下が大きい場合は電線を太くする。
- 全体を再確認する: ブレーカーと電線の組み合わせが、すべての条件を満たしているか確認する。
つまり、実務では「負荷電流からブレーカーを選び、許容電流と電圧降下から電線を選び、最後に保護条件を含めて全体を再確認する」と覚えるとよいでしょう。