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この記事の目次
力率改善コンデンサの役割
まず、力率改善コンデンサの役割を簡単に説明しましょう。
力率(cosΦ)とは簡単にいうと、有効に使える電力(有効電力P)と、全体の電力(皮相電力S)の比のことをいいます。式で表すと次のようになります。
負荷、特にモーターなどを多く使用していると遅れの力率QLが多くなり効率の低下などにつながります。
そこで次の図のように、力率改善コンデンサを負荷(モーター)に対して並列に接続し、進みの力率QCを増やして遅れ力率QLを打ち消します。
負荷(モーター)を接続すると、遅れの無効電力QL成分が増えて皮相電力Sがその分少なくなります。
そこで、力率改善コンデンサを接続することで進みの無効電力QCを増やし、遅れの無効電力QLを打ち消します。すると皮相電力S’となり、改善前の皮相電力Sに比べて必要な皮相電力を少なくできます。
皮相電力が少なくなるとその分、線路を流れる電流値も減り損失もその分減らすことができます。
力率改善のベクトル関係を表したのが次の図です。
これにより、有効に使える電力が増えて次のような効果が得られます。
- 電路の電圧降下の低減
- 系統の電力損失の低減
- 実質的な設備容量の増加
- 電力料金の低減
コンデンサの点検項目
それでは、コンデンサの点検項目としてどんなことがあるか説明していきます。
耐用年数の確認
耐用年数をて超えて使用していると故障のリスクが高まったり、電源投入時の突入電流が増えて、機器の故障のリスクも高まります。
そのため、耐用年数を超えたらできるだけ交換することが推奨されています。
一般的な力率改善用コンデンサの耐用年数は次の通りです。
- 高圧進相コンデンサ:使用開始後15年
- 低圧進相コンデンサ:使用開始後10年
力率改善コンデンサの膨らみ具合
コンデンサは劣化が進むと膨らんでくる性質があるため、コンデンサの膨らみ具合を調べることで劣化度合いを知ることができます。
高圧進相コンデンサのほうが、低圧進相コンデンサより顕著に膨らみが出るのでよく見ておきましょう。
高圧進相コンデンサの交換目安の膨らみ度合いは下の表のようになります[1]。
コンデンサ容量 | ケース膨れの目安(片側) |
10.6~ 53.2 kvar | 10mm以内 |
79.8~ 106 kvar | 15mm以内 |
160 ~ 319 kvar | 20mm以内 |
426 ~ 532 kvar | 25mm以内 |
外観異常
外観でも、異常を見つけることができますので、目視でもよく観察しましょう。
点検する項目は次の通りです。
- 端子部のゆるみ
- 碍子の破損
- 油漏れ
- ケース等の発錆
絶縁抵抗値の測定
絶縁抵抗が低下していると、漏電や停電の恐れが出てきますので異常値であれば交換が必要です。
目安として、全端子一括間とケースの間で1000MΩ以上あれば問題ありません。
測定する際は、碍子の清掃を行った上で測定しましょう。
静電容量の測定
静電容量もコンデンサの状態を知る指標となります。
測定するには、Cメーターまたは電圧電流計法で測定します。
定格容量の-5~+10%以内であれば問題ありませんが、その範囲に入っていない場合はない内部故障の可能性があるので、メーカーに連絡しましょう。
さいごに
今回の説明した力率改善コンデンサの点検項目をまとめると次の通りです。
- 耐用年数の確認
- 膨らみ具合
- 外観異常
- 絶縁抵抗値の測定
- 静電容量の測定
参考文献
[1]三菱高圧進相コンデンサ〔油入自冷式〕、形名KL-8取扱説明書(2023/10/24)