高圧設備の点検で使う試験器はどんなものがある?

悩む人
電気の保安業務や点検ではいろんな試験器を使ってるけど、どんなものがあるの?
筆者
いろんな試験器があって混乱すると思いますので一つ一つ見ていきましょう!

試験器とは?

そもそも試験器とは何でしょう?それは、一言で言うと「擬似的にリレーなどに信号を与えて動作を確認するための機器」です。

こんなことなぜするのかというと、遮断器などは事故の際に電路を遮断するために動作しますが、いざという時に遮断器が故障して動作しなかった場合使用している機器を故障させたり、感電事故につながります。

こういったように、いざと言う時にきちんと動作するように普段から試験器を使って動作を確認しておくのです。

試験器の種類

試験器には様々な種類があります。ひとつひとつどんな役割があるか見ていきましょう。

継電器試験器

継電器試験器でできるのは、過電流継電器試験と地絡方向継電器試験です。

過電流継電器試験では、遮断器が過電流が流れた際に、問題なく動作するか調べます。

地絡方向継電器試験では、地絡方向継電器がきちんと動作し、PASなどの開閉器が動作するか調べます。

過電流継電器試験の流れを次の図を使って説明すると、次のようになります。

過電流継電器試験の流れ
  1. 継電器試験器から試験電流を流す
  2. 過電流継電器が動作
  3. トリップコイルに信号が送られる
  4. 遮断が作動
過電流継電器試験の簡略図

過電流継電器の試験方法

過電流継電器と遮断機の連動試験は、継電器試験器から変流器二次側に試験電流を流し、動作を調べます。

最小動作電流試験

整定電流タップ値に対して、過電流継電器が作動し遮断器が遮断動作する最小の動作電流を測定する試験です。

最小動作電流は整定電流タップ値に対して±10%であれば適正範囲とします。

 

限時要素動作時間測定試験

整定電流タップ値の200%、300%、500%の試験電流を流したとき、過電流継電器が動作し遮断器が遮断完了するまでの時間を計測し、特性を調べます。

 

瞬時要素動作時間特性試験

過電流継電器の整定電流タップ値の200%の試験電流を流したとき、過電流継電器が動作し遮断器が遮断動作を完了するまでの時間を調べる試験です。

瞬時要素の時間を測定するときは、継電器の円盤が動かないように軽く手で押さえた状態で行います。

静止形過電流継電器の場合は、ロックスイッチが付いているので、そちらを使います。

地絡方向継電器の試験方法

地絡方向継電器は零相電圧の電圧要素を取り入れ、この電圧と零相変流器に流れる電流の位相を地絡方向継電器で判別し動作します。

地絡方向継電器の動作電流試験を以下の図を使って説明すると次のようになります。

地絡方向継電器の動作電流試験
  1. 継電器の整定電圧値を最小にする。
  2. 零相基準入力装置の一次側に三相一括で、整定電圧値の150%の電圧を印加する。
  3. 感度整定電流値に応じ、試験電流を徐々に流して継電器が動作した時の電流値を測定する(感度範囲は整定電流値の±10%以内)
地絡方向継電器試験の概略図

位相特性試験器

位相特性測定は、零相を検出するコンデンサと変流器に位相の異なる波形を入力し、位相角を不動作領域から動作領域へ移相させていき、継電器が動作する値を測定します。測定は、進み側と遅れ側の2点を測定します。

試験の流れとしては、次のようになります。

位相特性試験
  1. 継電器の整定電流値および整定電圧値を最小とする。
  2. 整定電圧値の150%の電圧を加え、整定電流値の1000%の電流を流す。
  3. 電流の位相を変えて継電器が動作する位相角を測定する(メーカーが明示する範囲)。

絶縁耐力試験装置

商用周波耐電圧及び雷インパルス耐電圧と2つの試験がありますが、一般的に絶縁耐力試験といえば、商用周波耐電圧試験を指します。

絶縁耐力試験を行う目的は、新しくケーブルを敷設するなどの新設工事や、修理でケーブルを更新した時に本当にその電気設備は使えるのか確かめるためです。

実際に使用する設備を施設し、接続されている状態で絶縁耐力耐力試験は行います。

試験回路を簡略的に表した図は次のようになり、規定の電圧を印加して絶縁性能を調べます。

耐圧電圧試験回路

電気設備を構成する機器および電路の種類に応じて、絶縁耐力試験の試験電圧および試験時間は次の表のように定められています。

試験対象物 試験する箇所 試験電圧 印加時間
高圧、特別高圧の電路 電路と大地間(多芯ケーブルにあっては、心線相互間および心線と大地との間) 最大使用電圧×1.5倍の電圧 10分間印加
回転機

(電動機、発電機など)

巻線と大地間 最大使用電圧×1.5倍の電圧

(500V未満となる場合は500V)

10分間印加
変圧器 巻線と他の巻線、鉄心および外箱間 最大使用電圧×1.5倍の電圧

(500V未満となる場合は500V)

10分間印加
器具

(遮断器、電力コンデンサなど)

充電部分と大地間 最大使用電圧×1.5倍の電圧

(500V未満となる場合は500V)

10分間印加

さいごに

高圧設備の試験といってもさまざまあり、高圧設備に関わっている人はそれぞれ大まかにでもどんな試験なのか知っておくといいでしょう。

今回の記事は高圧設備で行われる主な試験をだいたい網羅していますので、ぜひよく読んでみてください。

参考文献

電気設備の保守と試験(改訂3版)、葛山孝明・名倉正勝(共著)