誘導電動機とは?

この記事の内容
  • 誘導電動機の構造
  • 誘導電動機の原理
  • 誘導電動機の特徴

誘導電動機の構造

誘導電動機は<図1>のように回転する回転子と、回転磁界を発生させる固定子のおおきく2つが組み合わさってできています。

回転子はまずは、銅棒(またはアルミ棒)と短絡環でかご型の構造を作ります。その中に回転子鉄心を入れた構造になります。棒周辺の磁束密度を高めてトルクを増大させ、構造的に丈夫な効果があります。

固定子は電磁鋼板(珪素鋼板)でできています。

<図1>誘導電動機の構造

<図1>で説明した回転子と固定子を<図2>のように回転子を固定子の中にはめ込むことで誘導電動機になります。

<図2>誘導電動機の構造
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誘導電動機の原理

誘導電動機のかごは固定子による回転磁界によって相対的にかごが回転したように見えます。これによってフレミングの右手の法則を適用でき、起電力が<図3>のように発生します。

<図3>誘導電動機の起電力発生原理

さらにこの誘導起電力によって誘導電流が<図4>のように流れて、フレミングの左手の法則によって回転力が発生し、これによって誘導電動機のかごは回転をします。

<図4>誘導電動機の回転力

このような原理で誘導電動機のかごは回転しますが、回転磁界の回転に対してかごの回転速度は遅れるため、回転速度に差が生まれます。 図で表すと<図5>のようになります。

<図5>誘導電動機の滑り

誘導電動機の特徴

速度制御がしやすい

誘導電動機の回転速度は次のように表されます。この式を見てわかるように滑りを変えることによって高効率に回転速度を変えることが可能です。

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始動電流が大きい

誘導電動機の始動電流は滑りが大きいほど大きくなる特徴があります。

誘導電動機の運転初期に流れる電流はすべりが1であるため定格電流の4~6倍です。

そこで、Y-Δ始動法や補償器始動などの始動法で始動電流を抑えています。

始動トルクが小さい

誘導電動機のトルクも電流値と同様に滑りが大きいほど小さくなります。

そのため滑りが1に近い始動時は始動トルクが小さいです。

誘導電動機が適した負荷

誘導電動機は次のような負荷に適しています。 特に滑りを変えることで比較的簡単に回転速度を調整できるのでそのような負荷に適しています。

  • 一定流量で定速回転または可変流量の可変速揚水ポンプ
  • 巻上機、クレーン、エレベータ用の電動機
  • 各種工作機械

誘導電動機の等価回路

誘導電動機は固定子と回転の関係が変圧器のようにL等価回路で表すことができます。その図を表したのが<図6>です。

<図6>誘導電動機のL型等価回路

簡単化するために励磁電流は無視して考えると、
\(\mathit{I}_1\)′ =\(\displaystyle\frac{\mathit{V}_1}{\sqrt{\left( r_1+\dfrac{r_2}{s} \right )^2+\left( x_1+x_2 \right )^2}}\) [A] ・・・(1)

となります。一次側巻線の相数をmとすれば、二次入力P2[W]は(1)式を用いて、

\(\mathit{P}_2\) =\(\displaystyle\frac{\mathit{mV}_1 \ ^2\dfrac{r_2}{s}}{\left( r_1+\dfrac{r_2}{s} \right )^2+\left( x_1+x_2 \right )^2}\) [W] ・・・(2)

となるので電動機の回転角速度を \(\omega\) [rad/s]、電源の周波数を [Hz]、極数を p とすればトルクT [N・m]は、

T = \(\displaystyle\frac{\mathit{P}_2}{\omega}\) = \(\dfrac{\mathit{p}}{4{\pi}\mathit{f}}\)・\(\displaystyle\frac{\mathit{mV}_1 \ ^2\dfrac{r_2}{s}}{\left( r_1+\dfrac{r_2}{s} \right )^2+\left( x_1+x_2 \right )^2}\) [N・m] ・・・(3)

また、力率は、
\(\cos\theta\) = \(\displaystyle\frac{r_1+\dfrac{r_2}{s}}{\sqrt{\left( r_1+\dfrac{r_2}{s} \right )^2+\left( x_1+x_2 \right )^2}}\) ・・・(4)

となります。始動時の滑りはs = 1であるから、(1)~(4)式からも始動電流が大きく、始動トルクが小さく、力率が悪くなることがことがわかります。

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