- 同期電動機の動作原理
- 同期電動機の特徴
この記事の目次
同期電動機の構造と回転原理
まずは、同期電動機の構造と回転原理から説明していきます。
同期電動機の構造
同期電動機の構造は<図1>のようになっており、外側の固定子に巻かれている電気子巻線に三相交流回路を流すことで回転磁界を発生させます。固定子の中には回転子鉄心があり界磁巻線が巻かれておりこれに直流電流を流すことで磁化された電磁石にします。これにより、電気子巻線により発生する回転磁界に合わせて、中の回転子を同期させて回します。
中の回転子は電磁石ではなく、永久磁石を用いるものもあります。
同期電動機の回転原理
<図2>のような120°ずつ位相が異なる三相交流電圧を同期電動機の固定子に巻かれている電機子巻線に<図3>のように印加します。
電機子巻線へ三相交流電圧を先に説明したように印加することで、<図4>のように固定子に回転する磁界が発生します。
そして、この回転磁界の中に直流電圧で磁化した回転子を入れて回転磁界と同期して回転させることで<図5>のように電動機として使用できます。
同期電動機の特徴
それでは、続いて同期電動機の特徴を説明していきます。
同期速度の式
同期電動機の回転速度(通称:同期速度Ns)の式は次のように表されます。
同期速度は回転磁界を発生させる三相交流電源の周波数に比例し、回転子の磁極数に反比例するという特徴があります。磁極数とは回転子のN極とS極の総数のことです。
始動時に同期速度まで回転させる必要がある
同期電動機は初めトルクがほぼゼロであるため、同期速度まで何かしらの方法で回転させてあげる必要があります。
この同期電動機をトルクが発生する同期速度付近まで回転させる方法は次の通りです。
- 自己始動法
- 補助電動機始動法
- 低周波始動法
- 同期始動法
- サイリスタ始動法
代表的な始動法を説明していきます。
自己始動法
次の図のように同期電動機の回転子の周りに制動巻線を巻くことで、誘導電動機のかごの役割をし、始動時にトルクを得られるようにする方法です。
補助電動機始動法(始動電動機法)
補助電動機始動法は誘導電動機または直流電動機を用いて回転子を事前に同期速度付近まで回転させ、同期速度の回転磁界を発生させている固定子へ挿入する方法です。図で表すと次のようになります。
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力率調整の役割
同期電動機は<図6>のように界磁巻線に流れる界磁電流を変化させることで、力率を変化させることができます。このとき電機子巻線に流れる電気子電流も変化し、この界磁電流と電機子電流の変化を表したグラフをV曲線といいます。
V曲線は次に上げるような特徴があります。
- 力率1の時に電機子電流が最小になる
- 負荷が大きくなるほどV曲線はy軸(電機子電流)正方向にシフトする
- 力率1を境に遅れ力率から進み力率に変わる
同期電動機が負荷として適している機器
同期電動機は誘導電動機のように簡単には速度変化をすることが難しいため、次のような定速度で運転する機器に適しています。
- 一定流量で低速回転の揚水ポンプ
- 一定風速で定速回転の送風用電動機
- 圧延用電動機(正確な定速度が必要な場合)
さいごに
同期電動機は交流電源をうまく使いモーターとして機能させた画期的な機器で、私たちの生活の中にも広く使われています。電気に携わる人であればその原理や特徴は覚えておきましょう。