この記事の目次
動力幹線と主幹ブレーカの設計指針
解説していく回路はこのように、電動機が数台と、ヒーターなどのその他の電力装置をつないだ配線です。
その配線で赤枠で囲った箇所の、主幹動力用ブレーカーと幹線の選定方法を解説していきます。

各電動機に接続するブレーカーと電線の選定方法については、以下の記事で解説していますので、よければ見てみてください。
悩む人 電動機などに接続する動力用ブレーカーの容量を選定したいんだけど、どうやって決めたらいい? 筆者 電動機用動力ブレーカーは、特殊なブレーカー容量の決め方なので、詳しく解説していきます! […]
電動機があるとブレーカーの設計は特殊!?
電動機、その中でも特に誘導電動機は、始動時に次のグラフのように定格電流の数倍の電流が流れます。
そのため、普通に定格電流からブレーカー容量を選定してしまうと、始動電流によってブレーカーが落ちてしまうため電動機に接続する主幹の動力ブレーカーも各負荷のブレーカーと同様に特殊な設計になります。

設計手順
ブレーカーや配線を決める際は、次のように末端から大元にいくように設計をしていくとよいです。
今回説明する設計は、③、④の箇所になります。
- 各機器を決める
- 各機器へのブレーカーと電線の選定
- 動力の主幹ブレーカーを選定
- 動力の幹線を選定
- トランス容量が足りるか、どこから持ってくるかを決める(改修工事の場合)

幹線と主幹ブレーカーの選定方法
それでは、動力幹線と主幹ブレーカーの選定方法を解説していきます。
選定方法は、主に次の2つがあります。
- 内線規程を使い計算する
- 内線規程の表を使う
内線規程を使い計算する
まずは、内線規程を使い計算で、求める方法から解説します。
幹線の選定方法
主幹ブレーカーの容量より先に幹線を選定します。
理由は、主幹ブレーカーの容量を決める際に、幹線を選定する際に、計算する幹線の許容電流を使用するからです。
幹線は、次のように選定します。

詳しくは図を見ればわかりますが、簡単に解説すると、まず、電動機の定格電流の合計IM_SUMと、その他の機器の定格電流IH_SUMを合計を比べてます。
IM_SUMとIH_SUMの大小で、許容電流の導出の仕方がまず、異なります。
さらに、IM_SUMがIH_SUMよりも大きい場合は、IM_SUMが50Aより大きいか小さいかで導出方法が異なります。
根拠となる内線規程は、以下の通りです。
内線規程:「3705-7 電灯及び電力装置などを併用する幹線の太さ」(一部抜粋)
①電線は、低圧幹線の各部分ごとに、その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計以上の許容電流のあるものであること。ただし、その幹線に接続される負荷のうち、電動機又はこれに類する始動電流の大きい機器の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きい場合は、他の電気使用機械器具の定格電流の合計に次の値を加えた値以上の許容電流のある電線を使用すること。
a.電動機の定格電流の合計が50A以下の場合は、その定格電流の合計の1.25倍
b.前記aにおいて、50Aを超える場合は、1.1倍
では、実際に次のような配線で、動力幹線を導出してみましょう!

上図で示したような各負荷の定格電流の配線で設計してみましょう。
まずは、電動機の定格電流の合計値IM_SUMを求めてみます。
IM_SUM = 30A + 30A = 60A
続いて、その他の機器の定格電流の合計IH_SUMを出します。
IH_SUM = 10A + 10A = 20A
IM_SUMとIH_SUMを比べると、
IM_SUM > IH_SUM
となっています。
さらに、IM_SUM > 50Aです。
よって、上の(b-2)の計算式に当てはめて
IW > 1.1IM_SUM+IH_SUM
= 1.1×60+20 = 86 [A]
となり、幹線の許容電流は86A以上と求まりました。
ここで、内線規程の表から幹線の太さを決めると、次のように22sq以上の電線と決定できます。

主幹ブレーカーの選定方法
続いて、主幹ブレーカーの選定方法を解説します。
主幹ブレーカーは次のように選定します。

主幹ブレーカーは上図のように、幹線の許容電流を2.5倍した値と、電動機の定格電流の合計を3倍した値と、その他の機器の定格電流の合計を足した値を比較して、その大小関係で、導出方法が異なります。
以下、根拠となる内線規程です。
内線規程:「3705-8 幹線の過電流保護」(一部抜粋)
低圧屋内幹線を保護するために施設する過電流継電器は、その低圧屋内幹線の許容電流以下の定格電流のものであること。ただし、低圧幹線に電動機等が接続される場合の定格電流は、次のいずれかによることができる。
① 電動機等の定格電流の合計の3倍に、他の電気使用機械器具の定格電流の合計を加えた値以下であること。
② ①の規程による値が当該低圧幹線の許容電流を2.5倍した値を超える場合は、その許容電流を2.5倍した値以下であること。
③ 当該低圧幹線の許容電流が100Aを超える場合であって、①又は②の規程による値が過電流遮断器の標準定格に該当しないときは、①又は②の規程による値の直近上位の標準定格であること。
では、実際に先ほどと同様の配線で、主幹ブレーカーを選定してみましょう!
まず、幹線の許容電流を2,5倍した値を求めます。
2.5×IW =2.5×86 = 215 [A]・・・①
続いて、電動機の定格電流の合計を3倍した値と、その他の機器の定格電流の合計を足した値を求めます。
3×IM_SUM+IH_SUM = 3×60 + 20 = 200 [A]・・・②
①と②を比較すると、①とほうが大きいです。
よって、ブレーカー容量は、先ほど説明した方法に当てはめて計算すると、(a)の計算式を用いて次のように求められます。
IB1 ≤ 3×IM_SUM+IH_SUM = 200 [A]
よって、主幹ブレーカーの容量は、200A以下で、かつ始動電流で動作しない値に選定します。
内線規程の表を使う
2つ目の選定方法は、内線規程に記載されている表を使い選定する方法です。
次の表が内線規程の末尾に載っていますので、そちらで選定することができます。
ただし、こちらは配線に電動機のみが接続されている場合の選定方法ですので、電動機以外の機器が接続されている場合は、先に説明した計算で求めたほうがいいです。

この表で先ほどの、配線で電動機のみが接続されている場合を考えると、
電動機のkWの総和は、
7.5 + 7.5 =15 [kW]
となるので、表の一番近い値の箇所を見ると、15.7kWなので、CVケーブルの最小太さは、14sqとわかります。
遮断器の容量を見ると、今回はじか入れ始動とすると、電動機の中で最大のものは、7.5kWなので、7.5kWの箇所を見ると、遮断器の容量は、100Aとわかります。
以上が、内線規程の表を使った場合の選定方法になります。