この記事の目次
各パラメータを求める
今回は次のような特高の工場などでよくあるような配電回路を考えます。
遮断器の容量選定を行うため、断路器などは省略した簡単な回路にしています。
上位系統の%インピーダンス
上位系統の母線インピーダンスは、送配電業者の問い合わせなどから直接請求することで知ることができます。
送配電業者が提供している情報もありますが、探しても見当たらない場合は、送配電業者に連絡して教えてもらいましょう。
変圧器の%インピーダンス
変圧器の%インピーダンスは、受電設備の年次点検の際や、設備導入時に測定業者に依頼して測定してもらいます。
測定できない場合や、しない場合は仕様書におおよその%インピーダンスの値が記載していますので、そちらを使用します。
仕様書の%インピーダンスは、結構幅がありますので、一番小さい値の%インピーダンスで、決めたらそれよりも遮断電流が大きくなることはないので間違いないです。
ただ、遮断容量が過剰になる可能性はあります。
変圧器は、一般的に自己容量基準で表示されていることが多いです。
短絡電流の計算は、%インピーダンスをすべて基準容量に揃えて計算します。
変圧器の%インピーダンスは次の式で、基準容量に合わせます。
\mathit{\%Z_\mathrm{TB}}
=
\displaystyle \frac{\mathit{S_\mathrm{B}}}{\mathit{S_\mathrm{T}}}
\times
\mathit{\%Z_\mathrm{T}}
\)
SB:基準容量
ST:変圧器容量
%ZTB:基準容量ベースにおける変圧器の%インピーダンス
%ZT:変圧器容量STの変圧器の%インピーダンス
発電機、電動機の%インピーダンス
発電機は短絡後も電力を供給するため、もちろん%インピーダンスの計算にいれます。
ふだんは電力を供給しない電動機も、実は短絡事故時は電動機自身とそれに直結した回転エネルギーにより発電機として働き短絡電流を供給します。
そのため、電動機も%インピーダンスがあるため、短絡電流の計算にいれます。
短絡電流を計算する場合は、値が不明なときは平均的な値の25%で計算してよいです※1。
電動機は基本的に有効電力kWで仕様が決められていることが多いですが、%インピーダンスの計算には皮相電力kVAに直す必要があります。
次のような式で、電動機の皮相電力を求めて、%インピーダンスを基準容量に合わせます。
\(\mathit{S_\mathrm{M}}\fallingdotseq1.25\times\mathit{P_\mathrm{m}}\)
\(
\mathit{\%Z_\mathrm{M}}
=
\displaystyle \frac{\mathit{S_\mathrm{B}}}
{\mathit{S_\mathrm{M}}}
\times
\mathit{\%X_\mathrm{M}}
\)
SB:基準容量
SM:電動機容量
%ZM:基準容量ベースにおける電動機%インピーダンス
%XM:電動機の%リアクタンス
配線の%インピーダンス
配線の抵抗RとリアクタンスXは、次の表のようになります。
表の値は、6600Vケーブルの値です。
| 導体公称断面積(mm²) | 6600V CV(3心) | 6600V CVT | ||
| R(90℃) | X | R(90℃) | X | |
| (Ω/km) | (Ω/km) | (Ω/km) | (Ω/km) | |
| 14 | 1.71 | 0.153 | – | – |
| 22 | 1.08 | 0.143 | 1.08 | 0.163 |
| 38 | 0.626 | 0.13 | 0.626 | 0.15 |
| 60 | 0.397 | 0.121 | 0.397 | 0.139 |
| 100 | 0.239 | 0.112 | 0.239 | 0.129 |
| 150 | 0.159 | 0.106 | 0.159 | 0.123 |
| 200 | 0.121 | 0.105 | 0.121 | 0.121 |
| 250 | 0.0989 | 0.102 | 0.0984 | 0.118 |
| 325 | 0.0775 | 0.099 | 0.0768 | 0.114 |
前の表のR、Xに配線の距離[km]を掛けることで、配線のR、Xを求めることができます。
配線のR、Xから%R、%X、%Zを次のように求めます。
\(\mathit{\%R}= \displaystyle \frac{\mathit{S_\mathrm{B}}\times\mathit{R}}{\mathit{V_\mathrm{B}}^2}\times100\)
\(\mathit{\%X} = \displaystyle \frac{\mathit{S}_\mathrm{B}\times\mathit{X}}{\mathit{V_\mathrm{B}}^2}\times100\)
\(\mathit{\%Z}= \sqrt{\mathit{\%R}^2+\mathit{\%X}^2}\)
SB:基準容量
VB:基準電圧
ただ、受電設備内の配線であれば、%インピーダンスは無視できるほど小さくなることが多いです。
インピーダンスマップの作成
下のように、負荷に送る変圧器2次側の事故点aで三相短絡事故が起きた場合で、インピーダンスマップを作成してみましょう。
%インピーダンスを基準容量に揃える
インピーダンスマップを作成する第1ステップとして、基準容量に%インピーダンスを揃えます。
基準インピーダンスは、何にしてもよいですが、比較的小さいほうの基準に合わせたほうが値が大きくなりすぎないのでおすすめです。
今回は、300kVAを基準容量にしてそれに各%インピーダンスを合わせていきます。
上位系統の%インピーダンス
上位系統の%インピーダンスを300kVAに合わせていきます。
300kVA基準に直した%ZLine1を%ZLine1’とすると、次のようになります。
\(\begin{eqnarray}\mathit{\%Z_\mathrm{Line1}}{}^{\prime}&=& \displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{10MVA}}\times\mathit{\%Z_\mathrm{Line1}}\\[8px]&=&\displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{10MVA}}\times\mathrm{15\%}\\[8px]&=&\mathrm{0.45\%}\end{eqnarray}\)
Tr1の%インピーダンス
Tr1の%インピーダンスを300kVAに合わせていきます。
300kVA基準に直した%ZTr1を%ZTr1’とすると、次のようになります。
\(\begin{eqnarray}\mathit{\%Z_\mathrm{Tr1}}{}^{\prime}&=& \displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{2000kVA}}\times\mathit{\%Z_\mathrm{Tr1}}\\[8px]&=&\displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{2000kVA}}\times\mathrm{6\%}\\[8px]&=&\mathrm{0.9\%}\end{eqnarray}\)
Tr2の%インピーダンス
Tr2の%インピーダンスを300kVAに合わせていきます。
300kVA基準に直した%ZTr2を%ZTr2’とすると、次のようになります。
\(\begin{eqnarray}\mathit{\%Z_\mathrm{Tr2}}{}^{\prime}&=& \displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{500kVA}}\times\mathit{\%Z_\mathrm{Tr2}}\\[8px]&=&\displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{500kVA}}\times\mathrm{4\%}\\[8px]&=&\mathrm{2.4\%}\end{eqnarray}\)
電動機の%インピーダンス
電動機の%インピーダンスを300kVAに合わせていきます。
電動機は多くの場合、消費電力kWで記載されていることが多いので皮相電力表示に直します。
力率や効率の影響により、皮相電力は有効電力より大きくなります。そのため、消費電力に1.25を掛けることで、おおよその皮相電力を求めることができます。
求める電動機の皮相電力をSMとすると、皮相電力は次のように求められます。
\(\begin{eqnarray}\mathit{S_\mathrm{M}}&=& \mathrm{100kW}\times\mathrm{1.25}\\[8px]&=&\mathrm{125kVA}\end{eqnarray}\)
誘導電動機のインピーダンスがわからないときは、平均的な値である25%で計算します。※1
300kVA基準に換算した%ZMは、次のようになります。
\(\begin{eqnarray}\mathit{\%Z_\mathrm{M}}&=& \displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{125kVA}}\times\mathit{\%X_\mathrm{M}}\\[8px]&=&\displaystyle \frac{\mathrm{300kVA}}{\mathrm{125kVA}}\times\mathrm{25\%}\\[8px]&=&\mathrm{60\%}\end{eqnarray}\)
インピーダンスマップの作成
%インピーダンスを基準容量300kVAに揃えましたので、求めた%インピーダンスを使ってインピーダンスマップを作成します。
先ほど求めたパラメータをもとにインピーダンスマップを作成すると、次の図のようになります。
インピーダンスマップを作成したら、事故点から見た合成のインピーダンスを計算します。
事故点aから見た合成インピーダンスを%Zaとすると、次のように計算できます。
\(
\begin{eqnarray}
\mathit{\%Z_\mathrm{a}}
&=&
\mathit{\%Z_\mathrm{Tr3}}
+
\displaystyle \frac{1}{
\displaystyle \frac{1}{\mathit{\%Z_\mathrm{Tr1}}{}^{\prime}
+\mathit{\%Z_\mathrm{Line1}}{}^{\prime}}
+
\frac{1}{\mathit{\%Z_\mathrm{Tr2}}{}^{\prime}
+\mathit{\%Z_\mathrm{M}}}
}
\\[8px]
&=&
3+
\displaystyle \frac{1}{
\displaystyle \frac{1}{0.9+0.45}
+
\frac{1}{2.4+60}
}
\\[8px]
&=&
3+
\displaystyle \frac{1}{0.74+0.016}
\\[8px]
&=&
3+1.321
\\[8px]
&=&
4.321\%
\end{eqnarray}
\)
短絡電流を求める
インピーダンスマップの%インピーダンスが求められたら次は、短絡電流を求めていきます。
基準電流を求める
短絡電流を求めるために、まずは次の式で基準電流を求めます。
\(
\mathit{I_\mathrm{B}}
=
\displaystyle\frac{\mathit{S}_\mathrm{B}}
{\sqrt{3}\times\mathit{V_\mathrm{B}}}
\)
IB:基準電流
SB:基準容量
VB:基準電圧
この式より、基準電流を求めると次のようになります。
\(
\begin{eqnarray}
\mathit{I_\mathrm{B}}
&=&
\displaystyle\frac{\mathrm{300kVA}}
{\sqrt{3}\times\mathrm{6.6kV}}
\\[8px]
&=&
\mathrm{26.2A}
\end{eqnarray}
\)
短絡電流を計算
短絡電流とは、事故点で短絡事故が発生した際に流れる電流のことです。
短絡電流は、次の式で求めることができます。
\(
\mathit{I_\mathrm{s}}
=
\displaystyle\frac{\mathit{I}_\mathrm{B}}
{\mathit{\%Z_\mathrm{a}}}\times100
\)
Is:短絡電流
IB:基準電流
%Za:事故点から見た合成%インピーダンス
この式で、事故点aでの短絡電流を次のように求めます。
\(
\begin{eqnarray}
\mathit{I_\mathrm{s}}
&=&
\displaystyle\frac{\mathit{I}_\mathrm{B}}
{\mathit{\%Z_\mathrm{a}}}\times100
\\[8px]
&=&
\displaystyle\frac{\mathrm{26.2}}
{\mathrm{4.321}}\times100
\\[8px]
&=&
\mathrm{606.3A}
\end{eqnarray}
\)
定格遮断電流を決める
定格遮断電流とは、遮断器が短絡事故などの異常時に安全に遮断できる最大電流のことです。
先ほど求めた短絡電流より定格遮断電流を求めます。
定格遮断電流と短絡電流 Isは、次のような関係にある必要があります。
\((定格遮断電流)\gt\mathit{I_\mathrm{s}}\)
要は、短絡電流より定格遮断電流のほうが大きい必要があるということです。
遮断器の選定
遮断器の選定を理論を解説した後に、実際の回路で遮断器の選定をしてみます。
理論
定格遮断電流が決まったら遮断器を選定します。
遮断器を決める際は、以下の3つを満たしたものを選びます。
- 定格電圧
- 定格電流
- 定格遮断電流
定格電圧
定格電圧は、使用電圧以上のものを選びます。
実際には、6.6kVでは定格電圧7.2kVのように余裕を持って選定します。
定格電流
定格電流は、使用電流ギリギリではなく、突入電流などを考慮し、少なくとも使用電流の1.3倍~1.5倍程度は余裕を持って選定します。
変圧器に取り付ける真空遮断器の場合は、次のような式で使用電流を求めることができます。
\(
\mathit{I_\mathrm{B}}
=
\displaystyle\frac{\mathit{S}_\mathrm{Tr}}
{\sqrt3\times\mathit{V_\mathrm{B}}}
\)
IB:定格電流
STr:変圧器容量
VB:定格電圧
定格遮断電流
定格遮断電流は、異常時に切り離すことができる電流値のことで、前に説明した値をもとに、その値以上のものを選定します。
使用電圧6.6kVであれば、定格遮断電流は8kA、12.5kA、20kAがよく使用される値です。
実践
では、実際に前に解説した配電の回路において事故点aでの事故を遮断できるCB2の真空遮断器を選定してみましょう。
定格電圧
まず、定格電圧は変圧器の1次側の遮断器のため6.6kVです。
そのため、遮断器の定格電圧は7.2kVを選定します。
定格電流
変圧器の容量300kVAより定格電流を計算します。
短絡電流を求める際にも計算していますが、次のようになります。
\(
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {B}}
&=&
\frac{S_{\mathrm{Tr}}}
{\sqrt{3}\,V_{\mathrm B}}
\\[8pt]
&=&
\frac{300\,\mathrm{kVA}}
{\sqrt{3}\times6.6\,\mathrm{kV}}
\\[8pt]
&=&
26.2\,\mathrm{A}
\end{eqnarray}
\)
なので、定格電流は26.2Aの1.5倍して39.3A以上であれば問題ありません。
遮断器の場合は定格電流がかなり過剰になってしまう場合がありますが、それは製品ラインナップ上仕方ないです。
今回の場合は、定格電流400Aのものを選定します。
定格遮断電流
これが、遮断器の選定の中で一番計算がめんどくさいですが、今回はもう定格遮断電流を計算していますので、すぐに出せますね。
前に計算した通り事故点aでの短絡電流は606.3Aと求められました。
よって、定格遮断電流は、短絡電流以上とすればよいので今回は8kAを選定します。
さいごに
今回は、遮断器の選定方法についてかなり丁寧に解説しました。
電気主任技術者であれば、実際に遮断器を選定する機会もあると思いますので、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
参考文献