停電作業を行う前の準備は?

悩む人
キュービクルの中を修理するために停電作業になるんだけど、作業前の準備を教えて!
筆者

停電作業の前には短絡接地などいくつかの手順に従った準備が必要ですので解説していきます。

停電作業とは

停電作業とは、キュービクルなど高圧を受電設備の電気を止めて、中を点検したり、修理したりする作業です。停電の操作は手順を守らないと大事故につながります。

停電作業を行う際には、決まった手順に従って作業前の準備を行いますので、詳しく見ていきましょう。

停電の手順は状況に応じて変わるためあくまで一例ですが、どうしてそういう手順になるのか理解していれば応用できます。

停電の操作方法

それでは、停電作業をする前の準備について順に説明していきます。

作業計画の立案

作業計画を立てるときは、現場の状況を確認して行います。工場などでは生産設備を停止することが難しいこともあるので事前の準備が重要です。

計画の際は、停電のための機器操作手順書を作成しておきましょう。

安全用具の確認

安全用具は私たちの身を守ってくれる頼もしい味方なので、停電作業前には必ず状態を確認しておきます。

確認することとしては、次の項目です。

  • 保護具、防具等安全用具の外観上の点検を行い、異常がないことを確認する
  • 検電器の性能を検電器チェッカ等で確認する(現場ではテストボタン等により確認する。)

作業前の打ち合わせ

2名以上で作業を行う場合は、作業手順にお互いに認識の誤りが無いように作業前に打ち合わせを行います。

打ち合わせる内容としては、次の項目です。

  • 作業内容および作業分担
  • 作業方法および手順
  • 作業時間および停電時間
  • 作業範囲と充電部分及びその表示方法(電路の一部のみ停電し、充電部分に近接する場合は特に注意)
  • 作業環境
  • 現状のスイッチ位置の確認

停電操作

筆者
それでは、いよいよ停電操作になります。停電操作は状況によって変わることがありますが、主な手順は次の通りです。
  1. 低圧開閉器、遮断器の開放
  2. 主遮断装置(VCBなど)の開放
  3. 断路器(DS)の開放
  4. 引込口に区分開閉器(PAS、AS)がある場合は、区分開閉器の開放
  5. 投入禁止標識の取付け

停電の手順を図で表すと次のようになります。

検電

続いて高圧検電器で作業う範囲の電路の検電を行います。

注意点としては、検電は、三相とも無電圧であることを確認します。

残留電荷の放電

安全な方法で電路に残っている残留電荷を放電させます。特にコンデンサ及び高こう長電路においては充電が大きく、残留電荷による電撃等の危険性が大きいことから確実に放電を行いましょう。

放電の方法の例としては次の方法があります。

  • 放電棒により放電させる
  • 短絡接地器具により接地して放電させる
  • 断路器操作用ディスコン棒の先に接地線をつけ放電させる

短絡接地器具の取付け

停電はしていますが電路が誤って充電されてしまうことは考えられます。その際でも、短絡接地用器具を付けていると電源側でいち早く地絡検出(51G)して遮断できるため作業者が感電するのを防ぐことができます。

短絡接地器具を取り付ける手順は次のようになり、図で表したものが次のようになります。

  1. 先に接地側電線を接地極に確実に取り付ける。
  2. 停電した電路の一番電源に近い箇所に電路側器具を三相とも取り付ける。
  3. 接地標識を取り付ける。

注意点として短絡接地器具を取り付ける際は絶縁用保護具を着用して行いましょう。

停電作業

停電作業は作業前の打ち合わせで決めた作業手順通りに行います。

万が一予定外作業が生じる場合は、一度作業を中断しもう一度打ち合わせを行いましょう。

単独で思い付きでの作業は絶対にしてはいけません。

作業結果の見直し

作業終了後は次の項目を見直します。

  • 予定した作業がすべて終了したか。
  • 配線に結線間違いや接続不良はないか。
  • 試験時に使用したリード線の外し忘れ、工具類やウエスの忘れものはないか。
筆者
復電するとキュービクルの中に取りに行けなくなることもあるのでよく確認しましょう。

短絡接地器具の取外し

復電の前に各相に取り付けた短絡接地器具を取り外します。

外し方としては次の手順で行います。

  1. 各相に取り付けた短絡接地用器具を取り外す。
  2. 接地極に取り付けた金具を取り外す。
  3. 絶縁抵抗計により高圧電路の絶縁の確認を行う。
  4. 接地標識を取り外す。
  5. 作業者の退避。

送電操作

送電操作はすべての開閉器、遮断器の開放を確認の後、実施します。送電の手順は次の通りです。

  1. 投入禁止標識を取り外す。
  2. 保護継電器操作用開閉器のみ投入。
  3. 引込口の区分開閉器の投入。
  4. 断路器の投入。(受電電圧を確認)
  5. 主遮断装置の投入。(低圧側の各盤の電圧を確認する)
  6. 低圧動力バンクで相回転を確認する。
  7. 低圧開閉器の投入。(使用設備に電気が供給されていることを確認する)

さいごに

今回は停電操作をする際の手順についてまとめました。停電操作は間違うと感電する可能性のある危険な作業ですので、きちんと手順を守って安全に作業しましょう。

停電の手順をまとめると次のようになります。

停電の手順
  1. 作業計画の立案
  2. 安全用具の確認
  3. 作業前の打ち合わせ
  4. 停電操作
  5. 検電
  6. 残留電荷の放電
  7. 短絡接地器具の取付け
  8. 停電作業
  9. 作業結果の見直し
  10. 短絡接地器具の取外し
  11. 送電操作

参考文献

高圧・特別高圧電気取扱特別教育テキスト(オーム社)、一般社団法人日本電気協会