この記事の目次
地球に小さな太陽を作る
核融合発電に使われる核融合という現象は、実は私たちの超身近で起きており、その恩恵を受けています。
それはズバリ、「太陽」です。
太陽は、この記事を読んでいるいまも核融合を続けており、それによってあんなにも暖かく光輝いているのです。

核融合発電の燃料
核融合の燃料は、「水素」です。
正確には、下の図で示すように水素原子の中でも中性子の数が1つの「重水素」と中性子の数が2つの「トリチウム」を燃料とします。
このように、同じ元素で中性子の数がことなるものを「同位体」といいます。

核融合ではこの同位体である「重水素」と「トリチウム」が反応して、「ヘリウム」と「中性子」が生成されます。

さらにこの燃料である重水素は海水にも含まれているため、海水から取り出すことができます。
1リットルの水から、300リットルの石油に相当するほどのエネルギーが取り出すことができます。
核融合発電と原子力発電の違い
核融合反応と原子力発電に使われる核分裂は、どちらも核反応で「質量とエネルギーは互いに移りかわることができる」という相対性理論に基づいています。
しかしながら、それらは似て非なるものであるためさまざまな点で異なっています。
核融合 | 核分裂 | |
燃料 | 水から取り出せる
→枯渇の心配がない |
ウランやプルトニウム
→枯渇の心配がある |
安全性 | 事故時は、燃料がなくなり反応が止まる
→安全性が高い |
事故時に、核分裂が過度に連鎖的に進む暴走の可能性がある |
放射線 | 放射性廃棄物は発生するが、「高レベル放射性廃棄物」は発生しない | 高レベル放射性廃棄物が発生する |
実用化 | 2040年頃に最初の核融合を使った発電が実現する可能性がある | 現在、既に発電方式として使われている |
核融合発電は、燃料の枯渇や炉が暴走する心配がないため、核分裂と比較すると安全面では優れています。
しかし、核融合は放っておくと反応が止まってしまうため維持するために大量のエネルギーを必要とします。
そのため、投入エネルギーよりもいかに大きいエネルギーを得られるかが一番の課題でしょう。
プラズマ状態とは
物質には固体、液体、気体の状態があり、気体からさらに物質が高温になるとプラズマ状態になります。
プラズマ状態では、原子を構成していた原子核と電子がばらばらの状態となり、この状態で原子核同士がぶつかって核融合がおきます。
正確には、核融合の燃料の項で説明したように、原子核もさらに陽子と中性子で構成されています。

プラズマ現象は、私たちの周りでも見ることができ、「雷」、「オーロラ」、「蛍光灯」もプラズマ現象によるものです。
宇宙では、プラズマ状態のほうが一般的になります。
核融合発電の構造と特徴
核融合発電の種類として主なものに、ヘリカル型とトカマク型があります。
ヘリカル型とトカマク型はプラズマを維持するための磁場の発生方法や、プラズマの安定度などに違いがあります。研究が進んでいるのはトカマク型のほうです。
さらにトカマク型の構造は、ヘリカル型と比較して構造が単純であるため建設の面でのメリットもあります。
現在、各国が協力してフランスで建設中の人類初の核融合実験炉「ITER」(イーター)は、トカマク型です。
そこで、この記事では、トカマク型の構造について簡単に説明します。
トカマク型の実験炉「ITER」の構造は次の図のようになっています。

プラズマ
核融合反応を起こすプラズマは、1億℃以上あるため、プラズマが炉壁に直接あたるとプラズマが冷えたり、炉壁が損傷したりしてしまいます。
そのため、核融合発電では、真空にした容器の中にプラズマを入れて、「磁力線」の作用で浮かせて炉壁に直接プラズマが当たらないようにしています。
ブランケット
核融合反応の際に、発生するエネルギーの高い中性子を受け止めて、内部に冷却水を循環させて廃熱します。
核融合発電では、この中性子のエネルギーによって加熱された冷却水が電力生産に利用されます。
また、中性子の高いエネルギーで外部の機器や構造が破壊されることを防ぐ役割もあります。
真空容器
プラズマやブランケットが入る容器です。
内部を真空にして希薄なプラズマを入れます。
中心ソレノイドコイル
4ケルビン(-269℃)の超臨界ヘリウムで冷却された超伝導状態の電磁石です。
「電磁誘導」の技術を使い、プラズマに電流を流すために用いられます。
クライオスタット
クライオスタットは、中心ソレノイドやトロイダル磁場コイルなどの超電導磁石と真空容器に高真空で超低温な環境を提供します。
幅と高さが約30 m、重量3850 tもある超巨大な部品です。
トロイダル磁場コイル
真空容器の周囲に配置された「D」字型トロイダル磁場磁石は、プラズマ粒子を磁場によって閉じ込める役割があります。
磁場で閉じ込めるには、コイル形状の精度が非常に重要であるため、製造プロセス全体にわたって寸法管理に特別な注意が必要です。
核融合発電の現状と将来
核融合発電は将来的にどのように発展していくのか、専門化の意見等を参考に、まとめました。
現在のところおおよそ、次のように進行してくと予想されているそうです。
2034年 | ITER研究運用開始 |
2040年 | 最初の核融合発電が実現 |
2040年~2050年 | 日本で数百MWをを超える安定した発電を実現する原型炉を完成 |
21世紀後半 | 商用の核融合発電が実現 |
さいごに
核融合発電はエネルギー問題を根本から解決する可能性を秘めた発電方法です。
人類の英知の結晶ともいうべき、発電所の今後の進展に目が離せないですね!
参考文献