この記事の目次
直流耐圧試験を行う目的
耐圧試験は、竣工時新しくケーブルを敷設した場合や、ケーブルを更新して入れ替えた場合などにケーブルの耐電圧を調べるために行います。
耐圧試験には、直流耐圧試験と交流耐圧試験がありますが、今回は直流耐圧試験について説明していきます。
直流耐圧試験の印加電圧
直流耐圧試験の印加電圧は次の手順で求めていきます。
最大使用電圧を求める
まず、はじめに求めるのは、試験するケーブルや機器の最大使用電圧です。
最大使用電圧は次の表のように、電圧の大きさによって書ける係数が変わってきて、試験する電圧を見て適切な係数をかけて求めます。
使用電圧 | 係数 |
1kV以下 | 1.15倍 |
1kVを超え500kV未満 | 1.15/1.1倍 |
500kV以上 | 1.1倍 |
最大使用電圧に係数を掛ける
最大使用電圧に係数を掛けて、試験に用いる電圧の大きさを求めます。
最大使用電圧Emの1.5倍の電圧にさらに2倍を掛けた値が試験電圧です。
交流の場合は、1.5倍を掛けるだけでいいですが、直流の場合はさらにその値に2倍を掛けます。
式で表すと次のようになります。
直流耐圧試験の実施方法
続いて試験を行う方法を説明していきます。
ケーブルを束ねる
心線の種類によって束ね方が変わってきます。
心線ごとに遮へいがある3心ケーブルの場合は、3心を短絡して一括で試験を行います。そのうち2心のシールドに接地を接続します。
心線ごとに遮へいがない3心ケーブルの場合は、2心を短絡して1心を接地して2回に分けて試験を行います。
短絡した反対側は開放です。
直流耐圧試験器の電源を入れる
ケーブルを束ねたら直流耐圧試験器の電源をいれます。電源を入れたら試験の準備に入っていきます。
出力割合を100%
出力割合を調整するためのダイヤルが付いていますので、そのダイヤルを100%にしておきます。
この状態で試験電圧を調整していきます。
大まかに試験電圧付近まで上げる
試験する電圧までダイヤルで電圧を上げていきますが、まずは大まかに電圧を上げれるダイヤルで電圧を試験電圧にあわせます。
このダイヤルで試験電圧の直前まで電圧を上げて、残り少しの電圧に合わせるのは微調整できるダイヤルです。
微調で試験電圧に合わせる
大まかに電圧を合わせたら、次に使うのは微調整できるダイヤルです。
この微調整できるダイヤルを使い、試験電圧にピッタリと合わせます。
試験ボタンをオンにする
電圧を調整できたらいよいよ試験開始です。
直流耐圧試験器には試験ボタンがついていて、その試験ボタンを上にひくと電圧が印加されるようになっています。安全のため普通のボタンであれば押せばオンですが、試験ボタンは逆に引くとオンになるようになっています。
試験電圧は様子を見ながら徐々に印加していく場合と、ボタンを引いて一気に電圧を印加する場合があるようです。試験を行う会社などの方法に合わせましょう。
次の図の赤いボタンが試験ボタンです。
試験開始
電圧の変化を1分ごとに確認して、電圧が急激に変化したか確認します。
電圧値が急激に落ちてきた場合はケーブルが絶縁破壊を起こして漏電している可能性があるので、ケーブルの見直しが必要です。
試験ボタンをオフにする
試験が終了したら先ほどの、試験ボタンを押してオフにします。
試験ボタンをオフにしたら、電圧の割合のダイヤルや、電圧値調整ダイヤルのすべてをゼロに戻しておきましょう。次に試験を始める際にいきなり電圧がかからないようにするためです。
直流耐圧試験の注意点
直流耐圧試験を行う際は、注意事項がいくつかありますので、確認していきましょう。
- 試験回路の結線は高圧からはじめ、取り外す際は低圧から行う。
- 試験変圧器のリード線は、高圧の試験電圧に十分な絶縁耐力を有するもの使用する。
- 試験電圧は、異常のないことをたしかめながら徐々に上昇させ、それ以後は、試験電圧になるまで、少し遅めに上昇させる。
- 試験中に異常音が発生した場合はすぐに開放し、試験を中止できるようにする。
- 試験中は、電源電圧変動に注意し、電圧調整装置を監視して印加電圧の変動を防ぐ。
- 試験は10分間連続で印加しなければならないので、途中で中止した場合ははじめから行う。
- 試験用電源スイッチを切る場合は、必ず試験電圧を零にする。
- 試験完了後は、短絡線を必ず外す。
さいごに
今回は直流耐圧試験について解説しました。
耐圧試験はケーブルが耐えられるかどうかを確認するための重要な試験です。
電気主任技術者をしていると立ち会う機会も多いので、どういった試験なのか今回の記事を参考に把握しておくとよいでしょう。
参考文献
[1]電気設備の技術基準の解釈の解説,、産業保安グループ 電力安全課 (2018年10月1日改訂)