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ケーブルの絶縁耐力試験の方法
「電気設備に関する技術基準を定める省令」で定められている正式な名称は、絶縁耐力試験ですが、よく現場では、耐力試験と略されていわれることが多いですね!
ケーブルの絶縁耐力試験を分けると、次の図のようになります。

まず、ケーブルの絶縁耐力試験は交流で行うか、直流で行うかで分かれます。
ケーブル長が長くなると、ケーブルの静電容量の増大によって、交流で耐圧試験を行うと電流値が大きくなり、試験装置が大きくなりすぎてしまう場合があります。
その場合は、直流で耐圧試験を行ってもよいことになっています。
直流耐圧試験は、さらにE方式、G方式、N方式とわかれています。
それぞれの方式の特徴は次の通りです。
| 方式 | 特長 |
| E方式 | もっとも標準的。ケーブルに端末処理を行っている場合に用いる。 |
| G方式 | 表面漏れ電流を除去する。端末未処理の場合などに用いる。 |
| N方式 | 相間の絶縁を測定したい場合などに用いる。 |
直流絶縁耐力試験を行う目的
耐圧試験は、竣工時新しくケーブルを敷設した場合や、ケーブルを更新して入れ替えた場合などにケーブルの耐電圧を調べるために行います。
耐圧試験には、直流耐圧試験と交流耐圧試験がありますが、今回は直流耐圧試験について説明していきます。
直流絶縁耐力試験の印加電圧
直流耐圧試験の印加電圧は次の手順で求めていきます。
最大使用電圧を求める
まず、はじめに求めるのは、試験するケーブルや機器の最大使用電圧です。
最大使用電圧は次の表のように、電圧の大きさによって掛ける係数が変わってきて、試験する電圧を見て適切な係数をかけて求めます。
| 使用電圧 | 係数 |
| 1kV以下 | 1.15倍 |
| 1kVを超え500kV未満 | 1.15/1.1倍 |
| 500kV以上 | 1.1倍 |
最大使用電圧に係数を掛ける
最大使用電圧に係数を掛けて、試験に用いる電圧の大きさを求めます。
最大使用電圧Emの1.5倍の電圧にさらに2倍を掛けた値が直流耐圧試験の試験電圧です。
交流の場合は、1.5倍を掛けるだけでいいですが、直流の場合はさらにその値に2倍を掛けます。
式で表すと次のようになります。

直流絶縁耐力試験の実施方法
続いて試験を行う方法について、一般的なE方式の場合で説明していきます。
試験器の状態の確認
次の状態に試験器がなっているか確認します。
| 手順 | 操作 | |
| 1 | 入力電源切換スイッチ | 充電式 または、電池式 |
| 2 | 試験スイッチ | OFF |
| 3 | 試験方式切換スイッチ | E方式 |
| 4 | 出力電圧調整ツマミ | MIN |
結線方法
E方式の結線は次のようになります。
ケーブルの末端処理がされていて、遮蔽銅テープがアース処理されている場合は、E方式で直流耐圧試験を実施できます。
ポイントとして、3相一括で耐圧試験を行う際には、電圧を印加する方の箇所を図のように短絡します。
印加しない側は、機器に接続せず開放状態にします。

直流耐圧試験器の電源を入れる
結線が終わったら試験スイッチを入れます。
赤い試験スイッチを手前に引くと電圧が印加されます。
大まかに試験電圧付近まで上げる
試験する電圧まで出力電圧調整ツマミを上げていきますが、まずは大まかに電圧を上げれるダイヤルで電圧を試験電圧にあわせます。
このダイヤルで試験電圧の直前まで電圧を上げて、残り少しの電圧に合わせるのは微調整できるダイヤルです。
微調で試験電圧に合わせる
大まかに電圧を合わせたら、次に使うのは微調整できるダイヤルです。
この微調整できるダイヤルを使い、試験電圧にピッタリと合わせます。
10分間電圧を印加
試験電圧を調整したら、10分間試験電圧を印加し続けて耐圧を調べます。
その際、漏れ電流の値も異常がないか確認しましょう。
試験終了
試験が終了したら、次の手順で電源を切ります。
| 手順 | 操作 | |
| 1 | 出力電圧調整つまみ | 最小の位置にする |
| 2 | 試験スイッチ | 押して、試験電圧の出力を停止 |
直流絶縁耐力試験の注意点
直流絶縁耐力試験を行う際は、注意事項がいくつかありますので、確認していきましょう。
- 試験回路の結線は高圧からはじめ、取り外す際は低圧から行う。
- 試験電圧は、異常のないことをたしかめながら徐々に上昇させ、それ以後は、試験電圧になるまで少し遅めに上昇させる。
- 試験中に異常音が発生した場合はすぐに開放し、試験を中止できるようにする。
- 試験中は、電源電圧変動に注意し、電圧調整装置を監視して印加電圧の変動を防ぐ。
- 試験は10分間連続で印加しなければならないので、途中で中止した場合ははじめから行う。
- 試験用電源スイッチを切る場合は、必ず試験電圧を零にする。
- 試験完了後は、短絡線を必ず外す。
絶縁劣化の判定方法
直流耐圧試験で得られたデータによって、次のように絶縁劣化を判定します。
弱点比
弱点比とは、式で表すと次のようになります。
弱点比=\(\frac{第2ステップの絶縁抵抗}{第1ステップの絶縁抵抗}\)
弱点比とは、以下の図のように、印加電圧を変えた際の絶縁抵抗値の比になります。
印加電圧を、図の例のように変化させて、弱点比が3を超えたら危険な状態です。

成極比
成極比とは、以下の図のように、試験開始の1分後と10分後の絶縁抵抗値の比です。
正常なケーブルであれば、試験時間の経過とともに絶縁抵抗値はあがって漏れ電流が少なくなる傾向があります。
しかし、異常があるケーブルの場合、試験時間の経過とともに絶縁抵抗値が下がり、漏れ電流が増加する傾向があります。
そのため、成極比が1以上の場合は、劣化のおそれがあります。

キック現象、漏れ電流大
キック現象は、以下の図のように漏れ電流が瞬間的に高くなるのを繰り返す現状です。
キック現象がある場合は、ケーブル劣化のおそれがあります。
また、漏れ電流の値が、0.1µA以上の場合も、劣化のおそれがあるので、注意が必要です。

さいごに
今回は直流絶縁耐力試験について解説しました。
耐圧試験はケーブルが印加電圧に耐えられるかどうかを確認するための重要な試験です。
電気主任技術者をしていると立ち会う機会も多いので、どういった試験なのか今回の記事を参考に把握しておくとよいでしょう。
参考文献
[1]電気設備の技術基準の解釈の解説,、産業保安グループ 電力安全課 (2018年10月1日改訂) [2]MUSASHI IN-TECH,、3801 IP-601G 直流耐電圧試験器 取扱説明書 第11版