飛行機は高速で空を移動できる便利な乗り物です。しかし、便利な反面に二酸化炭素の排出量が他の乗り物に比べて多いことが問題になっています。
SAFとは廃油やバイオマス燃料を利用した次世代の燃料です。藻などからできるバイオマス燃料を利用すると、藻が作られる際に吸収するCO2と燃焼の際に発生するCO2量が等しくなるため実質CO2排出量が0(カーボンニュートラル)を実現できます。[1]
次のグラフを見てもわかるように航空機はバスや鉄道に比べて、二酸化炭素排出量が多いです。

この記事の目次
2030年までに航空燃料の10%をSAFにすることを義務化
日本国内において、航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会で、「2030年には本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」という目標が掲げられました。
2023年5月16日に建設が始まった廃食油を原料にSAFをつくる国内初の大規模プラントは、年間の製造能力は約3万キロリットル。全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)両グループの燃料使用量の合計(19年度で約870万キロリットル)の約0.3%に相当します。[2]
この量を見てもSAFの製造はまだまだ追いついておらず、開発を急務に進めていく必要があることがわかるでしょう。
SAFの多くは海外の輸入に依存
現状SAFの多くは輸入に頼っており、しかも製造しているところが限られているため各国SAFを奪い合う状況です。
海外で最も有名なSAF製造メーカーはフィンランドのネステ(Neste)で、国内でも伊藤忠商事が独占販売契約を結んでいます。[3]
国内での製造を進める上でも、国家予算をとって勧めていくべき事項でしょう。
国内でSAFを扱っている企業は?
国内でSAFを扱っている企業はまだ少ない現状です。そんななかでも、SAFを製造している企業はどこかいくつか説明していきます。
ユーグレナ
使用済みの食用油と微細藻類ユーグレナから抽出されるユーグレナ油脂を原料に製造されるバイオ燃料を製造している企業です。[4]
食用油だけでは限界がありますが、藻からも製造されるためより多くの燃料を製造できる能力があります。
SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア・スカイ・エナジー)
3社合同で設立された会社です。
原料は100%廃食用油を利用し、年間で約3万キロリットルのSAFの供給を実施していく予定です。なお新会社の出資割合は、日揮HDが48%、コスモ石油が48%、レボインターナショナルが4%。
ANA、JALなど大手企業も出資しており、資金力があることが強みになっています。[5]
今後の課題
SAFを普及させていくにあたっていったいどんな課題があるか見ていきましょう。
調達網の整備
SAFは飲食店などから出る食品油を使用します。そのためには、食品油を回収するためのネットワークを形成する必要があります。
また、回収した油を各空港に届ける必要もあるので、そういった回収や配達作業をどこがやるのか整備が必要です。
国産化
2030年時点で海外からの輸入が4割となる見込みとなっています。しかも、トウモロコシやサトウキビなどSAFの原料なる穀物の値段は今後も上昇していく見込みです。海外との奪い合いも激しくなりますので、国産化を勧めていく必要があります。
財源の確保
SAFはまだ開発途中の技術のため、プラントの建設など多額の資金が必要となります。
令和4年度で70.8億円の資金が支援予定ですが、まだまだ十分とは言えない額です。[6]
技術開発
技術的に発達段階ですので、技術開発を勧めていく必要があります。
SAFの主な製造方法として、
・都市ゴミや廃材などをFischer-Tropsch法により製造する方法(FT)
・使用済み食用油や植物油などを水素化処理することで製造する方法(HEFA)
・バイオマス糖などのアルコールから製造する方法(ATJ)
・脂肪酸エステル・脂肪酸の熱変換・水素化処理により製造する方法(CHJ)が挙げられます。[7]
その中でも使用済み食用油などを水素を使って製造する「HEFA」が現在主流です。
しかし、今後の傾向として排ガスや大気中の二酸化炭素から燃料を精製する「PTL」の技術が向上し、SAFの生産量割合の多くを占めるようになると言われています。
最後に
環境破壊の問題は、近年加速的に悪化しています。
飛行機は、早く遠くへ移動できる便利な乗り物で今後もなくなることはないでしょう。
だからこそ、環境に優しいSAF燃料を使用し、環境破壊に歯止めをかけることが今後の優先課題となります。
参考資料
[1]日本総研、国産SAF供給に向けて、広範なステークホルダーを巻き込んだ体制構築を(2023/6/21)[2]日経ビジネス、持続可能な航空燃料(SAF) 国産化へ原料調達網の整備が急務(2023/6/22)[3]BISINESSS INSIDER、「【国内初】伊藤忠が海外の航空会社へ持続可能な航空燃料・SAFを供給スタート。世界最大手のNeste社が製造」(2023/6/22)[4]サステナブルタイムズ、持続可能な航空燃料、“SAF”とは?その特徴や今必要とされている理由を紹介(2023/6/22)[5]BISINESSS INSIDER、日揮、コスモ石油らが「国産SAF」新会社設立。24年にも持続可能な航空燃料を供給(2023/6/22)[6]経済産業省 資源エネルギー庁、「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」について(2023/6/22)[7]サステナブルタイムズ、持続可能な航空燃料、“SAF”とは?その特徴や今必要とされている理由を紹介(2023/6/22)